今回は衛生管理者試験の労働生理の分野「体温」に関して説明します。
体温の調節
体温を調整する箇所 |
体温の調節は、間脳の視床下部にある体温調節中枢が担い、産熱と放熱によって調節されます。
産熱と放熱とは
産熱とは、体内の栄養素の化学変化(酸化、燃焼、分解)によって体温を上昇することです。
・産熱
栄養素の化学変化によって産生される
骨格筋で2/3、肝臓などで1/3が熱が発生する
放熱とは、物理的作用(放射、伝導、蒸泄)によって体温を下げることです。
・放熱
放射(ほうしゃ)…接触せずに体温が熱線として、体表から放出されること
伝導(でんどう)…身体と接触している物質への熱の移動のこと。主には空気による。
蒸泄(じょうせつ)…液体の蒸発による体温の放散。
高温環境下の症状
著しい高温環境下にいると、体温が上昇し続け、熱中症になってしまう危険性があります。さらに過剰な発汗は、塩分不足や脱水症状などを招きます。
熱中症について
・熱痙攣(ねつけいれん)
発汗によって血液中の塩分やミネラルが不足しているところに、水分を補給すると、より塩分などが不足し痙攣を起こす。
・熱射病
血管拡張、発汗がなくなることにより体温が上がり、意識障害などが起きること。
・熱虚脱
皮膚温度の上昇で血液が皮膚に集まることで、循環に回る血液が不足し、めまい・血圧低下・頭痛が起きることをいう。
ホメオスタシスについて
ストレスとなる外部環境の変化に対して、体の各器官の状況を恒常的状態に保とうとする仕組みをホメオスタシスといい、例として体温調節や自然治癒力が挙げられます。恒常性とも訳されます。
ホメオスタシスは、自律神経による神経性の調節と、内分泌系(ホルモン)などによる体液性の調節の相互作用によって維持されています。
ホメオスタシス(体温調整)の例
・寒冷環境下では
体温が下がる➡血管収縮➡血流量が減る➡
放熱量が減る・産熱量が増える➡体温が上昇する
不感蒸泄
人体が水分を失うのは、汗や排泄だけでなく、皮膚からも常時蒸発が行われている。つまり、感じていなくても(不感)、蒸発し排泄している(蒸泄)のである。皮膚からだけでなく、呼気からの水分喪失を含める場合もあり、一日に約850gの水分を失う。その蒸泄の量は、条件によって変動する。この放熱量は全体の25%にもなる。
練習問題
(1)体温調節中枢は、間脳の視床下部にあり、産熱と放熱とのバランスを維持し、体温を一定に保つよう機能している。
(2)産熱は、主に栄養素の酸化燃焼又は分解などの化学的反応によって行われ、放熱は、ふく射(放射)、伝導、蒸発などの物理的な過程で行われる。
(3)発汗には、体熱を放散する役割を果たす温熱性発汗と精神的緊張や感動による精神性発汗とがあり、労働時には一般にこの両方が現れる。
(4)発汗量が著しく多いときは、体内の水分が減少し血液中の塩分濃度が増加するため、痙攣を起こすことがある。
(5)発汗のない状態でも皮膚及び呼吸器から1日約850gの水の蒸発があり、これを不感蒸泄という。
答え
(1)
〇…問題文の通り。
(2)
〇…問題文の通り。
(3)
〇…問題文の通り。
(4)
✕…発汗量が著しく多いときに水分のみを補給すると、血液中の塩分濃度がより低下し、痙攣を起こすことがある。これを熱痙攣である。
(5)
〇…問題文の通り。皮膚からも常時蒸発が行われている。これを不感蒸泄という。
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