【労働衛生(有害業務に係るもの)】有機溶剤の健康障害・・・5日目
最終更新日:2020年8月4日今回は、労働衛生の分野の「有機溶剤の健康障害」について説明していきます。
有機溶剤の一般的特性
有機溶剤の一般的特性と障害は以下の通りです。
①脂溶性
・・・油脂をよく溶かし、揮発性、引火性がある②刺激性
・・・溶剤が付着したり、高濃度蒸気に触れると、皮膚や粘膜に炎症が起こる。③蒸発性
・・・皮膚や呼吸器から吸収されやすく、脂肪の多い組織である脳などに入り込み中枢神経系に麻酔作用を起こす。麻酔作用は、揮発性が高いほど、酩酊状態が強い・④吸収性
・・・有機溶剤は皮膚や呼吸器から吸収されやすく、脂肪の多い組織である脳などに入り込み中枢神経系に麻酔作用を起こす。
⑤有害性
皮膚・粘膜等の刺激と、中枢神経の麻酔作用があり、肝臓・腎臓障害を起こすものが多い。ベンゼンは造血器障害(再生不良性貧血症)を起こす。
有機溶剤の種類と疾病・症状
・二硫化硫黄
二硫化硫黄 |
急性中毒で麻酔、慢性中毒で精神障害、神経衰弱、微細動脈瘤が見られる。
・トリクロルエチレン
トリクロルエチレン |
気道から侵入し、三叉神経麻痺や脳萎縮を引き起こします。
・トルエン
不眠、末梢神経の異常。高濃度ばく露では、麻酔作用によって頭痛、めまい、眠気、脱力感、幻覚等を起こす。
・ノルマルヘキサン
ノルマルヘキサン |
眼や呼吸器の粘膜への刺激作用。繰り返しのばく露で多発性神経障害(末梢神経障害)、頭痛、めまい、筋力低下、歩行障害を起こす。
・酢酸メチル
酢酸メチル |
粘膜の刺激作用と麻酔作用があり、視力低下や視野狭窄が起こる。
・メチルアルコール
メチルアルコール |
皮膚、粘膜の刺激作用がある。吸入等で視神経障害(失明)や痙攣、昏睡、多発性神経炎を生じる。
・フッ化水素
フッ化水素 |
貧血、溶血、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼ
・ベンゼン
ベンゼン |
急性作用で麻酔作用を起こし、慢性作用では食欲不振のほか、造血機能障害が現れ、再生不良性貧血、白血病が現れる。
練習問題
化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)酢酸メチルによる健康障害では、視力低下、視野狭窄などがみられる。
(2)ノルマルヘキサンによる健康障害では、頭痛、めまい、多発性神経炎などがみられる。
(3)N, N-ジメチルホルムアミドによる健康障害では、頭痛、めまい、肝機能障害などがみられる。
(4)弗化水素による健康障害では、貧血、溶血、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼなどがみられる。
(5)ベンゼンによる健康障害では、再生不良性貧血、白血病などがみられる。
答え
(4)
✕…弗化水素による健康障害では、貧血、溶血、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼなどがみられる。
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